2015年12月25日金曜日

スポーツ振興へ寄付活用 沼津信金と市体協が覚書

 スポーツ振興へ寄付活用
 沼津信金と市体協が覚書

 沼津信用金庫(紅野正裕理事長)NPO法人沼津市体育協会(臼井勇二会長)24日、2020年の東京五輪開催に向けてスポーツ振興を目的とした寄付に関する覚書を交わした。同金庫は15年度から5年間、毎年度100万円計500万円を同協会に寄付する。
 同協会は寄付金を活用して、未来の五輪選手輩出を目指してジュニア育成を図るほか、市民の健康増進活動を活発化させる。同協会と同金庫のオリジナルグッズなども製作予定という。
 沼津市の同金庫本店で行われた調印式で紅野理事長は「五輪開催の20年は金庫創立70周年にあたる。行政、地域と一体となって機運を高めていきたい」と話した。臼井会長は「寄付は大変励みになる。目的にあった活用をしていきたい」と謝辞を述べた。

【静新平成271225()朝刊】

2015年12月17日木曜日

地方都市で補助金を使って行われる再開発が成功した試しはない

まちづくりはリノベーションで
 最少経費で既存施設に付加価値
 市による「リノベーションまちづくりシンポジウム」が九日、大手町会館で開かれ、北九州市で既存ビルを活用した市街地再生事業に取り組んでいる建築事務所代表の嶋田洋平氏が「ぼくらのリノベーションまちづくり」と題して講話。補助金に頼らない民間の自立型の取り組みによる市街地再生の手法について話した。市の幹部や不動産業界など民間の関係者ら百人近い聰講者があった。
 北九州市の空きビルで先進例
 市街地再生シンポジウム
 前提 最初に嶋田氏は、現在の経済状況と社会の変化を解説した。
 それによると、これまでの日本経済は人口増加を前提として発展してきたが、少子化による人口減少が始まり、経済でも従来とは異なる状況が到来した。建物は余るようになり、新築が減って空き家が増え続けている。自治体も収入が減り、公務員は安定した身分ではなくなり始めている。
 こうした状況下では、公的な補助金を受けて始める市街地活性化事業は常に補助金カットのリスクがあり、補助金が途絶えるのと同時に失敗するので、補助金に頼らない公民連携の事業が重要になるという。
 嶋田氏は、補助金を薬物に例え、補助金依存症になった商店街は、補助金をもらって一過性のイベントを開くことしか考えられなくなる、と警告。また、多額の補助金を出して工場を誘致しても、これからの工場はロボットが生産作業をするので、地元には、わずかな事務員パートの雇用しかもたらさない、との見方を示した。
 さらに、嶋田氏は「地方都市で補助金を使って行われる再開発が成功した試しはない」と強調し、一例として嶋田氏の地元の駅前再開発ビルを挙げた。このビルは市内の他のビルから入居者を吸い取っているに過ぎず、再開発事業が市内に新たな空き家を生み出している状況だという。
 そして、地方自治法第二条十四項に、地方公共団体は最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない、という条文があることに触れ、「再開発は法律違反の犯罪的行為。民間が勝手にやるのはかまわないが」と述べ、自身は国民の一人として、こうした無謀を止めなくてはならないと思っているとの考えを示した。
 リノベーション建物が余っているのに新たな建物を造る、あるいは多額の経費を投じて建物を壊して大きな建物を造る、といった再開発の概念に対抗するものとして、嶋田氏は「リノベーションまちづくり」を挙げた。
 これは空き家となっている建物を最少の投資で改装し、新たな入居者を得て雇用創出や地価上昇につなげるというもので、北九州市魚町地区で実際に手掛けた事例を紹介した。
 新幹線も停車する小倉駅も南にある同地区は、古くから商業地として繁栄し、かつては商店主らが資金を出し合って商店街の頭上を覆うアーケードを率先して建設するほどの勢いがあった。しかし、北九州市の経済を支えてきた八幡製鉄所の縮小などもあり、商店街のシャッター街化が進んだ。
 こうした中で嶋田氏は長らく空き家状態だったビルの経営を任される。そしてビルの中で最も古い木造部分の経営改善から着手した。
 嶋田氏は、このスペースを新しいことを試せる場とすることを決め、インターネットなどを介して入居希望者を求めたところ、趣味で作った手芸品などを売りたいと考えている人達が、すぐに集まった。そこで希望者達に支払い可能な家賃の額を尋ね、その額に相応するスペースを貸し出すという対応を取った。その際、多くの人が月二~三万円と答えたという。
 これによって入居者全体で月約三十万円の家賃収入があることから、この収入の五年分を建物改装などの最大投資額とすることに決め、千八百万円の予算で改装。改装した区画を「メルカート三番街」と命名した。
 この試みは成功し、入居者の中には、それまで趣味で行っていた作品制作を専業化して工芸作家として独り立ちする人も現れた。
 そして、「メルカート三番街」は何か新しい面白いことが行われている場所として評価も高まり、ビルの他の区画にも入居者が現れたほか、ビル近隣の空き店舗なども入居者で埋まるようになったという。
 その手法 嶋田氏は空き家や空き店舗を「空間資源」と呼び、都市を変える潜在的な力を持った存在と見なしている。リノベーションとは、この資源の有効活用であり、建物を改装するのが重要なのではなく、建物に入る中身を生み出すことが重要だという。
 「今は商店街不動産の数よりも、商店街で商売をしたい人の数のほうが圧倒的に少ない時代」との認識から、本来は店舗を構えられないような、趣味として作品制作などの活動をしている人達に嶋田氏は目をつけた。
 そして、その人達が趣味を仕事にできるような場として「メルカー卜三番街」をち上げ、参入障壁を取り去るため、安い家賃でも入居できるようにした。
 こうした手法を実行するには、江戸時代にあった「家守(やもり)」の考え方を復活させることが重要だという。家守とは、江戸の町に数多くあった長屋の管理人のことで、大家から委託を受けて長屋や入居者の管理を行った。家賃の一部が家守の収入となったので、家守は入居者獲得に力を注いだ。
 嶋田氏は、不動産オーナーとビジネスオーナー(入居者)を仲介する現代版家守としての活動もしていて、会社を立ち上げ、北九州市で活動している。その一環である空きアパート再生事業では、固定資産税と同額の家賃で大家から部屋を借り、改装して一般人に又貸ししている。大家に払う家賃と入居者から受け取る家賃の差額を改装費に充て、数年後には部屋を入居者ごと大家に返還しているという。
 嶋田氏は、こうした家守的な人材や組織を生み出していくために必要なこととして「リノベーションスクール」の開催を挙げ、不動産オーナーや行政関係者も参加し、公民連携で空間資源の活用法を探ることの重要性を説いた。

【沼朝平成271217()号】

2015年12月2日水曜日