2012年7月1日日曜日

中心街根本的に見直せ

静岡新聞 社説<2012.7.1> 西武沼津店撤退 中心街根本的に見直せ  沼津市のJR沼津駅前の西武沼津店が来年1月末で閉店する。運営会社のそごう・西武が決定を地元に伝えた。沼津のみならず、東部でも唯一の百貨店で、衝撃は商業関係者にとどまらず一般市民に広がっている。「商都・沼津」の沈滞を象徴する出来事だ。  決定を受け、市は中心市街地の活性化と都市機能の再生、集積に向けた庁内委員会を緊急に立ち上げた。商工業者などでつくる市中心市街地活性化協議会も「まちづくり部会」(仮称)を,設置する方針を固めた。官民が連携し、中心街そのものの在り方を根本的に見直す機会とすべきだ。  同店は1957年、西武が地方第1号店として出店した老舗。盛期には伊豆半島を含む広域から多くの集客があり、売上高は200億円を超えたが、2011年度は74億円とそごう・西武26店舗中、最下位だった。  中高年層や贈答品など一定需要はあったが、若い世代の関心は低かった。駅前に立地する百貨店という業態自体が、沼津など地方都市に合わなくなったという見方もある。  西武撤退のうわさは以前からあり、2年前には厳しい状況を説明するそごう・西武の山下国夫社長に、市長らが存続を説得した。業績が悪化する同店を中心市街地の中核にしたまま依存してきた行政や商業界は反省しなくてはならない。  中心市街地の年間商品販売額は大幅な減少が続き、空き店舗率は4月時点で約10%と、この10年間でほぼ倍増した。昨年の歩行者通行量は00年の半分以下だ。付け焼き刃的に空き店舗を埋めても、効果は限られる。  西武撤退で最も懸念されるのは中心街の空洞化の加速だ。跡地利用については、まちづくり全体の視点で考えるべきで、商業施設だけが選択肢ではない。中心部に人口を増やすためのマンションや文化施設なども視野に入れたらどうか。  沼津駅北口には14年夏、県と市による東部コンベンションセンター「プラサ・ヴェルデ」が開業する。県東部の拠点施設にふさわしい駅周辺のにぎわいは各種催事の誘致に欠かせない。懸案の駅周辺の鉄道高架事業の先行きが不透明なままでは、西武跡地への進出意欲や誘致活動にもマイナスになる。  沼津市では昨年、沼津東急ホテルが事業譲渡し、全国ブランドの撤退が続く。半世紀以上も親しまれていた百貨店の閉店に「来るべき時が来た」と受け止めた市民も多い。西武撤退を新たなスタートととらえ、市は中心街の立て直しを急いでほしい。 (静新平成24年7月1日朝刊)

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